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2016年4月12日火曜日

【小説感想】イングレス エージェント・ストーリーズ(土屋つかさ&渡辺浩弐)


 ■「イングレス」というゲームの小説化である。

イングレスは
2チームに分かれ、
マップ上の起点を奪い合い、
囲碁のように陣地を拡げ、奪い合うゲームだ。



そしてこのゲームの特異性は
そのゲームマップが現実の世界の地図だということ。
現実にある建物。
神社や石碑、銅像や駅、郵便局、コンビニなど
さまざまな場所がゲームの起点になる。
その地点を自陣にしたいのならば

「自分自身が歩いてその地点に向かわなければならない」

このアイディアでこのゲームはとても面白くなった。



ゲームをする人間は部屋に引きこもってなどいない。
どんどん外に出て行って、ぐんぐんと歩く。
近場にポイントがあればそこまで歩いてゆくのだ。
遠い所なら電車を使ってでも行く。
ふとした旅行先でゲームを始めることもある。
そう、現実の地図の全てがゲームのマップなのである。
既に世界中にその起点はある。



そして、青のチームと緑のチームに分かれるのだが、
そのゲームプレイヤーは全て現実の人間である。
コンピューター相手に戦うわけではない。
世界中にいるプレイヤー同士が同じチームになり
敵となったプレイヤー達と戦うのだ。



■なんて感じの面白いゲームで
スマホゲームであり
Googleが提供しているものなので
マップはそのままGoogleマップ

いまや世界中の人達がプレイしているゲームなのである。

あなたが暮らしている現実と同じ空間で
あなたはには見えないままに戦いが繰り広げられている。

■…と、長くなりましたがそのゲームのノベライズなのねー。
スマホのモニター画面から現実に侵食したゲーム。
それをさらに深く物語として紡ぎ上げることにより。

このゲーム世界は「現実になった」

小説内にも現実の場所が出て来て
そこで世界は見えない人には見えないままに変わっていく、
そんな話だ。

「それはゲームの設定じゃないのか?」
「ただの小説内の想像の物語だろう?」

そんな気持ちがどんどんあやふやになってゆく。
どこまでが現実でどこまでが人が造り上げたものなのか。

しかし、現実にある建物、道や橋、自動車に電車、飛行機
それらは全て人間が造り上げたものだ。

ゲームも小説も人間が創り上げたものだ。
それの違いはどこにあるというのだ?

自然だけが現実で
人間が創ったものは現実ではない
なんてことはないだろう?

現実と物語がどんどん融合し不可分になり
そうして、どんどんとあやふやになってくる。

どちららが現実でどちらが夢か。



■と、そこまでなら。
そういう物語もあったかもしれないが、
この小説はそこからさらに先に進んだ。

現実と虚構が反転し
未来と過去が入れ替わる。

本当の自分はなんなのか。
自分は今どこにいるのか。

生とはなにか
死とはどういうことなのか

意識、自我、
自分とは何なのか
何を持って私は私なのか。

それらの答えがダイナミックな展開で
怒濤のパワーでめくるめく。

うふふふふ。

「完璧な幸せ」を知りたい人は
読んで見ると良いのではないだろうか。

その方法がこの小説に書いてあるのだ。

■そんな感じで後半の渡辺浩弐のパートは
彼の小説の集大成みたいな感じでとても良かったのですよー。
読み終わったあとは興奮で寝付かれぬほど。

うっほううっほ!
オススメ!







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