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2018年1月28日日曜日

【小説】黒女とトニーケニー


「こんにちは、あなたは誰?」
「こんにちは、私は門番です」

「そこを通してはくれませんか?」
「ダメです」
「なぜです?」
「王様の許可がない人は通すことはできません」


「王様はどこにいますか?」
「この門の向こう側です」

「…これまでにこの門を通った人はいますか?」
「ひとりもいません」

「あなたは優秀な門番ですね」
「私は優秀な門番です」
「いつからあなたはここにいるのですか?」
「千年は昔からです」

「王様は本当にいるのですか?」
「王様はいつだって皆の心の中にいます」

「そうです、ここはあなたの心の城壁。あなたの王は心を閉ざしてしまった」
「あなたは誰ですか?」

「私は医者です、王様の病を治すためやってきました、王からの手紙もあります」
「ふむふむ、間違いないようですね」
「そうです、間違いありません」
「では、お入りください」

「ありがとうございます」
「お医者さま…」
「なんでしょう?」
「きっと王様を治してくださいね」
「えぇ、きっと…」

門番はそう言うとまた前を向いて守護の任務をまっとうした。



極楽京都日記: 世界の仕組み。 


追記:

もちろん道の先には城は無く、
王なんてもいやしない。
この世界の王は先ほどの門番なのだ。
私は少し時間を潰してから
元の道を戻り
門番に「王様は良くなった」と言うだけだ。

それで彼の生命は回復することだろう。

安心が必要だ。

安寧で満たされる。

良い旅を。


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